安物でいいという発想は、医療用には通じない
口コミはもともと短い文章が多いので、そこに書かれてある真意や理由などはわかりにくい。
とくに、“かつら”についての口コミは少なく、“医療用かつら”となるともっと少ない。抗がん剤治療や円形脱毛症で抜け毛に悩んでいる女性には、口コミやツイッターで時間を費やしている暇などないのかも知れない。
精神的にも不安定で、追い詰められている人が多い。そんな中で、「これでは医療用かつらの意味がない!」という書き込みを見つけた。ズレるしムレる、重たいのだそうだ。リハビリにはとても着用していけない、重たくてサイテーというコメントが付け加えられていた。
そもそも医療用のかつらというのは、書き込んだ女性のコメントにあるような事柄を、医療的な観点からクリアした製品をいう。
ファッション用に市販されているかつらとは大きく違って、患者の“こうあって欲しい”という願いや、専門家の立場から“こうであるべき”という理想が具現化されているはず。
最近では紹介した事例のような粗悪品は少なくなったが、通販の安物にはこのような欠陥商品が隠れている場合がある。まず注意したいのは、“とくに医療用に限っては、安物でなんとか間に合わそう”などと考えないことだ。
効力はナシ?できたての医療用かつらJIS規格
医療用のかつらには、ほんの1年程前にJIS規格という一定の決まりができた。昔から先にお話ししたような苦情が多く、ようやく業界団体が重い腰を上げた。
しかし自主規制のようなものなので、それを取り締まることはできない。違反ではないし罰則もない。それ以前には、医療用という定義さえなかった。必要に迫られた利用者が、ギリギリになって友達や知り合いから聞き出し、医療用かつらという存在を知ったという人がたくさんいる。
もう少し啓蒙活動に力を入れて欲しいし、医療用としての“品格”を確かなものにしてもらいたい。ともあれ自分で気をつけるしかないというのが現状での結論。気をつけるべきポイントや心得を列記しておきます。参考にしてください。
医療用かつらを軽くみてしまうと失敗する
- 医療用かつらには、脱毛を隠すことが主目的ではない。それだけなら一般のファッション用で十分。
- 医療用かつらの役割には、散歩や運動、リハビリをやりやすくするというミッションがある。そのために必要になるのが機能性である。
- 機能性とは、「滑り止め、蒸れ防止(通気性)、サイズ調整(アジャスター)」などのこと。これが充実していないと役に立たない。
- 機能性をしっかりさせるには、ベテラン職人の縫い込みが必要になるので、人件費がかかり必然的に価格は高くなって当たり前。
- 医療用かつらで安物を選ぶのは良くない。しかし高額である必要もない。出店費用などの必要がない通販なら、同じレベルにある市販品の30%は安く買える。
- 適正な価格としては5万円~8万円台で、工房をもっている専業メーカーがおすすめ。メンテナンスや相談事に便利。