口コミには医療用かつらの間違った認識が多い
何かの目的があって書き込みサイトを覗いていたわけではありませんが、長く苦しい抗がん剤治療を終えてひと段落した状態というのは、自宅にいても何もすることがない。することがないというより、“することがデキナイ”と言ったほうが的確かもしれません。
それで時間つぶしにネットをいじっていたら「最近の医療用かつらは低品質のモノが多いね、人工毛ばかりで純粋な人毛100%というのがない」、「大量生産で手間暇をかけたクオリティを日本人はやらなくなった」などという書き込みがあって、頭の中は疑問符でいっぱいになりました。
私のかつらに対する認識とずいぶんなズレがあったからです。もしかして、私の認識のほうが間違っていたのかしら?と思ったほどですが、その後、どこのかつらメーカーのサイトを調べても、人毛だけで製品化しているところは見当たりませんでした。
人毛を使わなくなった理由には以下のような経緯があると思います。
- 人毛をまったく使ってないわけではないけれど、人毛は変質しやすく耐久性、品質維持といった点で問題がある。
- 現代は人毛が20%-30%、人工毛が70%程度の比率でミックスしているのが主流。そのほうが“耐久性が高い”から。
- 人工毛は化学的につくられた素材なので、耐久性・耐湿性、あるいは毛髪の形状などを高いレベルで一定に保つようにできている。人毛とミックスすることで補完しあえるほど良い関係になる。
- 大量生産と言っても、工業化製品ではない。また他の業界のように大きな市場が形成されるほどではなく、大量消費には結びつかない。
- 手間暇かけた手作業というのも、ちゃんと行っている。髪の毛の手植え作業というのもその1つ。非常に根気のいる作業で、長年のキャリアがないとむずかしい。
- 毛にも自然の流れや、自然に見えるつむじの形というのがある。これを導き出す作業も職人さんの手作業のワザ。
- 医療用かつらは、機能的な面で作り込み箇所の多い製品。基本は機械化ではなく手作業でなければ成立しない。
感覚だけで裏付けのない書き逃げは許せない!
「医療用かつらの安物」とか、「高額なボッタくり商品」といった口コミもたまに見かけるけれど、そういう口コミを書いた人は根拠をちゃんと示してほしい。
実名が入っても、それが真実であるなら仕方ないと思う。口コミだから尻馬に乗って、面白く適当に書いておけばいい、どうせハンドルネーム・匿名でイケるのだから、といったような書き逃げは、実際に抗がん剤治療や他の病気の脱毛で苦しんでいる人に迷惑だと思いませんか?
医療用かつらの価格の高低については、一概に金額だけで安物、ボッタくりと決めつけるのはムチャクチャな言い分です。高くても手の込んだもの、品質にとことんこだわったものなら相応です。
また安くても企業努力で無駄な部分のコストカットをし、それを価格還元しているなら品質に問題は生じません。医療用かつらは手作業の多い製品なので、手抜きがしにくく、すればすぐにバレてしまう製品です。